従来、日本人には胃がんが最も多く、大腸がんはむしろ欧米に多い病気でした。ところが最近では、食生活の欧米化に伴って大腸がんが急激に増えています。最近の統計では、女性のがん死亡原因の一位は大腸がんとなっています。さらに2015年までには、男女を合わせた日本人のがん罹患数の一位になると予測されています。
大腸がんは比較的おとなしい性質のがんが多く、胃がんや肺がんなどに比べると成長が遅く、リンパ節移転も少ないので、早期発見によりほぼ100%治ります。
直腸・大腸がんは、血便、下腹部痛、便通の異常(今まで便秘だった人が下痢になったり、逆に毎日排便があった人が便秘になる)、便が細くなるなどの自覚症状がありますが、これらはある程度進行したがんの場合です。大腸がんの早期には便に血が混じる程度、あるいは目にみえない微量の出血(潜血)が生じる程度がほとんどです。ですから、年に一度は定期的に大腸検査を受けることが大切です。
大腸内視鏡検査は、大腸(結腸)を内側から直接見ることができる検査法です。検査を行うために、内視鏡を注意深く肛門を通して大腸に挿入します。大腸内視鏡検査に使用する器械は柔らかく、人差し指くらいの太さです。内視鏡の先端から明るい光を発して、大腸の内部を鮮明に観察し、病変があるかどうかを調べます。
大腸内視鏡検査中にポリープを切除することも可能です。ポリープ型の早期がんは内視鏡を使って切除することができ、これを内視鏡的ポリペクトミーといいます。平坦型や陥凹型の早期がんは、内視鏡的粘膜切除術という方法で切除することができます。
ポリープは、いぼの様な形をしており、粘膜が異常に増殖したものです。内視鏡で切除した場合には詳しく顕微鏡で検査します。がんが粘膜内に浅くとどまっていて内視鏡で完全に取りきれていれば、これで治療が終了します。このような内視鏡による治療技術の開発は、早期がんの治療に大きな成果をあげています。